初めに
腹にすえかねる怒り、激怒、ずっと心を離れないいらだち、イライラ、憎悪。。。非常にしんどい感情です。これら怒りの感情を、今よりもっと減らすための心理学の知見を、本記事ではご紹介します。
本記事をお読みいただければ、今よりは、イライラしなくなったり、ずっと心にこびりついている憎しみが和らいだりするはずです。
どうぞ最後までお付き合いください。
第1ステップ
怒りの感情を軽減するためには、1番初めに、怒りというものを、知的に理解することが重要になります。
怒りとは何か?と問われると、実に様々な答えが考えられます。また、答えに困ってしまう方も多いでしょう。なんといっても感情は形がないので、どうにも捉えどころがありません。ただ、敵を知り、己を知らば。。。です。怒りの感情と上手に付き合っていくには、怒りの正体を知的に理解していくことが、とても大切な第一歩になります。
そこで、感情を研究してきた学問の代表が心理学であるため、心理学では怒りをどう考えているかを、これからみていきます。
怒りに関する重要な議論
あなたは、怒りは善・悪、どちらだと思われますか?
悲しみや恐れなど他の感情に比べ、怒りをどう捉えるかについては、本当に様々な意見があります。怒りは悪だとする仏教思想、怒りは必要な感情だとする一部の心理学、その間にも、どちらかというと悪寄り、どちらかというと善寄りの考えもありますし、善でも悪でもないという心理学の学派もあります。これだけたくさんの意見があるということは、難しい議論なのは間違いありません。
私は小学校高学年くらいから、怒りの感情に、本当に苦しんできました。なぜそんなにイライラするのか?なぜ怒った後にひどく自己嫌悪に陥るのか?なぜ円滑な人間関係を長期間に渡って継続できないのか?その理由を知りたくて、大学では心理学を専攻しました。以来30年、いろいろ勉強し、様々な手法を試し、今では自分なりの解を得て、その苦しみはだいぶ減りました。今の私なら、怒りを溜め込みすぎて、重度の胃潰瘍になり、胃に穴が開きかけることもないと思います(汗)。その自分なりの解をこれからご紹介していきます。端的にいうと、交流分析の考えをベースにしつつ、他の学派から積極的に「いいとこどり」をして、つくりあげたものです。
第2ステップ
怒りとは、現在の問題を解決するために、必要な感情だと考えています。私は、怒りが悪だとは、思っていません。そもそも絶対になくせないですし、なくす必要もないという立場です。
怒りは、なくそうとすればするほど、無意識の中にどんどん溜まっていってしまいます(人の意識は大きく分けると、顕在意識と無意識に分かれます)。この無意識の中に溜めこまれた膨大な怒りが、諸悪の根源です。それが大きくなればなるほど、ずっとイライラが続いたり、頻繁に怒りが暴発します(いわゆる「瞬間湯沸かし器」です)。そして、胃潰瘍などのストレス性の病気になったりします。
上段はよく怒っている人の話でしたが、平素、滅多に怒らない、温和で気の弱い人は、怒りに苦しまないかというと、そんなことはありません。まず、よく怒る人以上に、ストレス性の病気になりやすいです。そして自傷行為を行う確率が上がります。どういうことかというと、よく怒っている人は、怒りが自分以外の他人に向かいやすく、平素怒らない人は、自分自身に向かいやすい。そのため、自分を攻撃する病気や自傷行為が、よく怒る人以上に多くなってしまいます。また心理的には、溜め込まれた怒りが自分に向かうため、「自分はどうしようもない人間だ」と強く思うようになります。強い劣等感です。そして劣等感が更に強まると、「自分はどうせ何をやってもできない」となり、何事にも無気力になってしまいます。
そして、両者には重大な共通点があります。それは「怒ってはいけないという禁止」が心にかかっていることです。
普段怒らない人に、そういう禁止が働いているのはわかりやすいですが、普段よく怒る人にも、禁止がかかっています(ただ、普段怒らない人よりは緩いです)。禁止がかかっているから、日々起こる、本来怒っていい事柄を我慢して、むすっとして終わります。それが無意識にどんどん溜め込まれていくので、コップから水があふれるように、暴発してしまうのです。
そのため、第2ステップは「怒ることを許す」ことになります。怒ることは悪などではなく、現実の問題を解決するために必要な問題だと、何度も確認していく。「怒ってもいいんだよ」と、何度も自分に言い聞かせていく。怒りは悪であるという価値観を緩め、怒ることを自らに許可していく。これらを行うことで、怒りを溜め込むのではなく、すぐに、率直に、怒りを相手に伝えられる自分をつくっていく。これが怒りを軽減する第2ステップです。
ここでとても効果的なのが、アファーメーションです。こちらに解説記事のリンクを貼っておきますので、ご参照ください。すでにアファーメーションをご存じの方は、怒ることを許すアファーメーションの言葉を考えたり、名言を探してください。それができたら、あとは毎日、その許可の言葉を声に出して読み上げるだけです。
名言の力 アファーメーションなど | Jアカブログ (j-academia.com)
そして、怒りを発することへの抵抗がきつくなってきたら、その度に、この記事をお読みください。
怒ってはいけないという禁止は、かなり高い確率で、あなたの養育者から与えられたものです。しかも、0~6歳、物心がつく前に植え付けられていますし、養育者自身も無意識のうちに、子供に植え付けています。そのため、親以外の大人から、怒ってもいいんだよ、と言ってもらうこと・怒ってもいいんだよ、と書かれた文章を読むことも、禁止を緩める有効な手段になります。
繰り返しますが、私は、怒りは必要だと思っています。私自身、これからもしょっちゅう怒りますが、それでよいと思っています。あなたにとっては、私は親以外の大人です。特にこの「第2ステップ」を何度か読むことで、禁止を緩めてください。また、ネットを検索したら、怒りを肯定的にとらえる記事もたくさん見つかります。あなたが「この人のことなら信じられるな」という人の記事を見つけ、それらを読むのもとても良いです。多くの親以外の大人が、怒ることを許可していることを、ぜひ知って欲しいです。
そしてもう1つ、これもお話ししておく必要があります。幼少期にかけられた禁止がすごく強固だと、アファーメーションと新たな価値観を文字として読むだけでは、緩められない可能性があります。その場合は、腕のいいカウンセラーの力を借りた方が早いです。
東京以外にお住まいだと、腕のいいカウンセラーを探すのはなかなか大変です。また、これは異論がたくさん出そうですが、個人的には、こういうワークに慣れていないうちは、リモートより対面の方がよいと思います。そうすると、ますますそういうカウンセラー・ワークを探すのが大変になってしまいますが、自己投資として考えると、相当割のいい投資です。アファーメーション+文章を読むだけでは効果が実感できない場合、ご検討してみてください。
理想の怒り方
第1ステップ:怒りを知的に理解することを進めていきます。
例えば列に並んでいるときに、目の前に割り込まれたとします。これは当然、怒っていい状況です。『私たちは、ここまでずっと並んで待っているんです。それなのに、割り込まれたら腹が立ちます。列の後ろに並んでください』と、淡々と、しかしはっきり言う。これが、理想的な怒り方です。
ポイントは3つ。怒っている・腹が立つ・頭にくるなど、怒っていることを直接表現する言葉を言っていること。もう1つは、なぜ起こっているのかを、詳細に述べていること。そして、がなり立てたりせず、淡々と、しかしはっきりと言っていることです。この3つのポイントを押さえた言い方で、率直に相手に伝えたなら、怒りが無意識に抑圧されることはありません。
しかし、これが難しい。
割り込んできた相手が強面で且つ複数だったら、誰だって言いにくい。しかも、ほとんどの人は怒りを表現することを禁止されているため、そもそも怒りを伝えることが難しい。このようにして、本来怒るべき場面で、怒りが表現されず、無意識に抑圧されていきます。
怒りの種類
交流分析では、人が生まれながらに持っている感情と、それが抑圧されることによって生まれる代用の感情があると考えます。前者を基本感情、後者をラケット感情といいます。
先の例で、列に割り込まれた瞬間、イラっとする。これが怒りの基本感情です。ただ、何かしらの理由で怒りの基本感情が表現されることなく、抑圧されると、その怒りは無意識に押し込められ、ラケット感情に振り替わります。
怒りに類するもの。しつこくずっと続くイライラ。相手をぶち殺してやりたいという憎悪。理性で押さえられないくらい大きな激怒などなど。これらがラケット感情です。基本感情の怒りと比べると、もっと持続時間が長かったり、もっと破壊的な点が特徴です。また、怒りの矛先が自分に向かった場合の、劣等感や希死念慮(死にたいという気持ち)もラケット感情です。
なお、基本感情・ラケット感情に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。より深く理解されたい方はご覧ください。
一旦中断
ここまで書いて、もうこの文字数ですか。。。あと3つのステップが残っていますが、あまりに文字数が多いので、前編・後編に分けることにします。後編を書き切ったら、下にリンクを貼ります。本日はご覧いただき、ありがとうございました。
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