皆様、こんにちは。
今回は目標設定のワークです。
目標設定自体は、ビジネス・教育・スポーツなど、今はそこらじゅうで行われていることですが、「こういうのがいいんじゃないか」と、私が思っているものがありますので、ご紹介させていただきます。また、なぜそう思うかに関して、目標設定に絡んだ心理学の理論も複数記載します。
本ワークの対象
「ご自身の成長」「お子様のやる気向上」「部下の方のやる気向上」「生徒のやる気向上」、どれでも同じ原理で大丈夫です。ただ、幼稚園児・保育園児は、できないことはないですが、厳しい子もいます(小学1年は大丈夫だと思っています)。
なお、『自己理解のためのワークシート』を作ってくださっている方は、今回の内容も、そのシートに加えてください。私と当社社員さん達は、年度の切り替えのタイミングで、目標を更新しています。
心理学① 自己理解を深めるためのワークシート | Jアカブログ (j-academia.com)
私の考える必須の目標とその理由
10年以上先の目標/3~5年後の目標/1年以内の目標/達成課題。立てる目標はこの4つです。また、10年以上先の目標は文章で書いてもらい(定性目標)、他の3つは定量目標を立ててもらいます。
この4つである理由
ビジネスシーンでは、1年後の目標=短期目標が中心で、10年以上先の目標を、社員さん達に設定させている企業は多くない気がします。半面、小学校などでは、将来の仕事を考えさせる授業は多いですが、そのために中期的には何を目標とし、年度→達成課題と落とし込むところまでは、ほとんどの先生はやられていません。
このやり方だと、残念ながら、ざっと半分の人は、動機づけられないはずです。
人間は、短期的な目標に動機づけられる人と、長期的な目標に動機づけられる人に、大別できることが、脳科学でわかっています。短期型の人は、短短期(日次か週次、せいぜい月次目標:私のものだと達成課題に該当)に1番動機づけられますし、長期型の人は、長期、もしくはそれ以上先の超長期目標に動機づけられます(長期型の人は遠大で崇高な目標が好きなので、私のものでは10年以上としています)。そのため、長・中・短・短短期の4つの目標があった方が、動機づけられる人の割合が上がります。
定性目標と定量目標
定量目標とは、できたかできなかったかが、誰の目にも明らかな目標です。売上1億出す・内申36を取る等、数値化されているか、〇〇高校に入る・課長になる等です。それに対して定性目標は、数値化できない・抽象度の高い目標です。
長期・超長期目標を定性目標にしている理由
私の言う長期・超長期目標は、『どんな人間になりたいか?』です。その中に、具体的な職業・地位・収入等/夢の話はあっても構いませんが、それよりも、例えば、もっとリーダーシップが取れる人間になる、とか、自分で自分のことを、好きだと胸を張って言える人間になりたい、など、性格面・人間性の話が中心になって欲しいです。『どんな人間になりたいか?』。その問いに、素直に答えてもらう形です。そして、それを文章として、割合長々と書いてもらいます。結果、定量目標ではなく定性目標になります。
モチベーション・やる気向上の話になると、必ず出てくる心理学用語が、外発的動機づけと内発的動機づけです。
外発的動機づけとは、目標を達成したら給料が増え、未達だと怒られる、という感じで、外部から与えられる報酬・懲罰による動機づけです。それに対して、内発的動機づけとは、自分の中の「やりたい」という気持ちに基づく動機づけです。また、これは学者先生の間でも、意見が割れていますが、外発的動機づけは悪で、内発的動機づけだけが良い、という意見と、両方のバランスを取ることが大事だ、という意見があります。いずれの意見でも、内発的動機づけが大事であることは変わりません。
創業から10年くらいは、如何に従業員さん達の内発的動機づけを高めるかが、私のテーマでした(大学の専攻は産業心理学です)。その結果行きついた答えが臨床心理学で、具体的には、様々な心理療法の手法を用いて、従業員さんそれぞれが自己理解を深め、その結果として自己成長意欲を持つ、という人財育成スキームでした。
私が社内でやっていることは、心理療法の手法を用いて、自己理解を深めてもらう→すると、『こんな人間になりたい』という欲求が、自然発生的に、社員さん達のうちに芽生える(これが長期目標であり、正に内発的動機づけ)→具体的な数値目標を設定してもらう、という流れをつくることです。これは、子育て・生徒指導にも、そのまま適用できます。ちなみに今、ブログに投稿しているのは、この流れの1つ1つでして、それを最初から最後まで書くことによって、どのご家庭・職場・教育現場でも、やっていただけるような『教材』を創りたいと考えています。
そのため、Jアカブログ・カテゴリー「心理学」のワークを、初めから順にやっていただき、その後(9番目に)、この「目標設定」をやっていただいた方が効果は高いです。ただ、いきなりこちらから始めていただいても、一定の効果はあります。なお、小学生・中学生・高校生のお子様の場合、心理学②~⑦は難しい可能性があるので、⑧⑨のみでも良いと思います。
人は、問われることで、潜在意識に沈んでいた欲求が、顕在意識に浮上することがあります。そのため、よりスムーズに引き出すために、数字という縛りを外し、ある程度自由に考えもらいます。そして更に、『こんな人間になりたい』という欲求を文字化してもらうことで、明確化・強化を狙います。こうやって長期目標が定まると、その後の中期・短期・短短期は、スラスラ決まります。この4つの中で、長期目標が肝です。
4つ以外の目標は必要か?
あってもなくても良いと思います。小・中・高生なら、学年に関わらず、進学先の目標はあった方が良いでしょうし、企業なら、その企業にとって重要なもの(年度方針など)に則した目標はあった方が良いかもしれません。あまりにたくさんの目標があると、意識が分散してしまいますが、2・3個追加するくらいなら問題ないと思います。
ロックの目標設定理論
目標設定・モチベーションの話になったとき、これもよく出てくる理論ですが、ロックという先生の目標設定理論というものがあります。実は私、卒論はこれで書いたので、個人的に外す訳にいきません。
だらだら書くと、膨大な文字数になってしまうので、要点だけ書きます。
その人ができそうだと思える、ぎりぎり困難な目標が、最も動機づけられる
簡単すぎるのもダメ・難しすぎるのもダメ、ということです。ここで親御様・経営者・上司・先生の皆様に注意していただきのが、「その人ができそうだと思える」の部分です。我々から見たら、これならできるだろうと思う難易度でも、お子様・部下の方・生徒さん自身が「できる」と思えないと、全く動機づけされないです。特におとなしめで、自分に自信のない人には十分注意が必要で、そういうタイプの人には、「その人が十分できそうだと思える困難さ」の方が良いです。
目標が明確であるほど動機づけられる
この理論から、中・短・短短期の目標は定量目標が良いと思いますし、定性目標にせざるを得ない長期目標は、割合長めの文章が良いと思っています。
フィードバックの有無・質によって、動機づけ効果が左右される
このまま読み進めていただき、「アフターフォロー」欄もご参照ください。
4つの目標の詳細
10年以上先の目標
『どんな人間になりたいか?』『いつまでになりたいか?』を、この欄に記載してもらいます。
ここで問題なのが、出てくる目標が、親御様・経営者・上司・先生の意図に沿わない場合です。例えば、企業でこのワークをやるとして、ある社員の人が、将来は起業したい、と書いたとします。ただでさえ、深刻な人手不足です。多くの企業では、そんなことを目標にされては困ります。
この辺りも、いずれ記事にしますが、ここでは要点だけ、簡単に記しておきます。その人が、大した考えなしに、軽い気持ちで言っていたなら問題はありません。ただ、真剣にそう書いてきたなら、企業側が何をしようと、その方はいずれ退職されると思います。こういうワークをすることで、退職が早まる可能性はありますが、これで退職される方は、それがなくても、近い将来、別の理由で退職すると思います。そのため、企業経営では『採用』がものすごく重要になってきます。企業にとって、困る人材は初めから採らない。採用の失敗は、研修では取り返せないと思います。
また、親は勉強してほしいのに、子供がプロゲーマーになりたいと書いてきたとします。こういうズレが生じた場合、後述するアフターフォローの場で、双方が納得するまで話し合います。なお、そういうズレを早期発見できるという効果も、このワークにはあります。企業や学習塾の場合、そのズレを放置していると、結局、退職・退塾になってしまいます。
3~5年後の目標
3~5年後に達成したい数値目標を1つ決めてもらいます。ここから下3つは、上で書いた人間に近づくための目標にします。また、ここからはあくまで定量目標です。
そして、ここから3つは難易度が重要です。何の努力もせずに達成できてしまいそうな簡単な目標では困りますし、こちら側から見て、絶望的に無理そうな目標でも困ります。「頑張ったら達成できそうな目標」が良い難易度です(ロックの目標設定理論の1つ目)。
1年以内の目標
当社では1つにしていますが、これは2・3個あってもいいかもしれません。皆様にお任せします。
達成課題
毎日〇〇する/毎週〇〇する/1ヶ月に〇回〇〇をする等です。達成課題は1個以上であれば、何個でも良いですが、できもしない個数にはしないでください。「頑張ったらできそうな個数」です。
アフターフォロー
これもいずれ記載しますが、当社では、毎月1回・1時間、全社員さんと、1対1で、個人面談というものを行っています。この個人面談と心理学のワークショップが、社員さん達の動機づけ・定着率向上の『切り札』になっています。
その個人面談の中で2回は、この4つの目標についてのみ話し合うようにしています。それ以外の月も、面談の頭で、進捗状況の報告を受けます。目標は立ててもらった。しかしその後放置、では、その方がよほど優秀でない限り、絵にかいた餅に終わります。親子間では、企業以上にコミュニケーションの機会が多いので、それ以上の頻度で、話し合い・進捗状況のチェックを行ってください。
家庭・職場に比べて難しいのは、教育現場です。先生が受け持つ人数は、企業よりかなり多いので、1人1人をフォローする時間が、実際には取れないと思います。そのため、なるべく全担当生徒の目標を覚えておき、褒める時・叱る時・授業の合間等々に、その話題に触れていくことを心掛ける、くらいが現実的だと思います。当塾もこのくらいしかできていません。
最後に
まとめます。ぜひ皆様にやっていただきたいことは・・・
- お子様・部下の方・生徒に、30分から1時間かけて、4つの目標を立ててもらう(集合研修で可)。
- できる範囲で、アフターフォローをする。
これをやったところで、全てのお子様・部下の方・生徒が、急に眼の色を変えて頑張る、ということは起こりません。しかし、やらない場合と比べると、モチベーションの平均値は、ほぼ100%上がります(燃える人と燃えない人の差は激しいですが)。
『人を育てる』。本当に、難しい大事業です。これさえやれば大丈夫、という安易な方法はないため、子供・部下・生徒のために、良いと思われることはどんどんやっていく。パッと効果がなくても、やり続けていく。そういう地道な努力が愛であり、その愛が、人を育てていくんだろうと思います。
今回は以上です。ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
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