本稿の趣旨
皆様、こんにちは。
本稿は、アイデンティティについての解説記事ですが、単に心理学の教科書的な解説をすることを第一義としていません。本文をお読みいただく前に、補足させていただきます。
目的1 純粋に、アイデンティティについての知識が欲しい
アイデンティティとは?の初めの部分をお読みください。
目的2 自己成長
もしあなたが、ご自身を成長させるために来てくださったならば、
心理学① 自己理解を深めるためのワークシート | Jアカブログ (j-academia.com)
を先にお読みいただき、そのワークの一環として、本記事をお読みいただくと、より効果的です。本記事は、単に理論を解説するだけでなく、お読みいただくことで、自己理解・自己成長が図れるものにしたい、という意図で記しております。そのため、最後の6つの問いに対する答えを、『自己理解を深めるためのワークシート』に追記してください。これも、ものすごく自己理解・自己成長を図れるワークです。
もし、ここまでの私の記事を既にお読みいただいていたとしたら、すいません。順番的には、今、投稿するのは、この内容ではないはずです。ただ、もうすぐ中学・高校が冬休みに入るので、繰り上げて、急いでこの記事を挟み込みました。ご容赦ください。
なお、もしあなたが中学生・高校生だとしたら、本当に驚くばかりです。中学・高校段階で、このようなことに関心を持てるのは、大袈裟かもしれませんが、天才的です。ちなみにあなたは、心理学的才能に相当恵まれていますよ。正直、中高生には、上のワークは難しいですが、あなたなら可能かもしれません。他の大人と同様、上記リンク先にまずは行ってみてください。
目的3 子育て・人財育成・教育
お子様・部下の方・生徒さん達に、このワークをやらせたいと思われて、こちらに来てくださった場合、下の『アイデンティティとは』以降を、その方に読ませていただき、問いに答えてもらってください。
アイデンティティとは
『アイデンティティ』とは、だいたい、男の子なら中2、女の子なら中1くらいから創られ始め、20歳くらいに一旦できあがる、その人の性格・個性のようなものです(年齢には個人差がかなり大きいです)。そして、このアイデンティティ形成が上手くいくかいかないかが、その後の人生に非常に大きな影響を及ぼすとされています。
元々は、エリクソンという発達心理学の先生の、ライフサイクル論というものの中に出てくる言葉です。アイデンティティの詳細、並びにライフサイクル論自体を知りたいという方は、こちらの投稿をご覧ください。
心理学③ エリクソンのライフサイクル論 | Jアカブログ (j-academia.com)
少し話が逸れますが、人の心がどのように成長・発展するかについて、多くの心理学者がご自身の考えを表明されていますが、その中にユングという人の発達モデルがあります。
ユングのモデルは、エリクソンのものと比べると随分簡単で、自我の確立→中年の危機→個性化、という3つだけで構成されています。そしてユングのいう自我と、エリクソンのいうアイデンティティは、結構似ている印象です。ちなみに、ユングもエリクソンも、心理学で1番偉い?フロイトという人の弟子なので、理論が一部似通るのは、当然といえば当然です。
ユングは、自我の確立は、40・50代までかかると考えました。しかも60代以降も進化させていくべきものだ、とも言っています。つまり、自我というものは、一生かけて進化させていくべきものだ、と言っている訳です。
私は、アイデンティティもそういうものだと思っています。心理学の教科書には、理想的なアイデンティティも示されていますが、10代で、完璧に、理想的なアイデンティティを構築できる人は、この世にいないと思います。そのため、アイデンティティは全ての大人に関わる問題ですので、本稿を読まれているあなたが10代でなかったとしても、我が事として読み進めてもらえると嬉しいです。
そして、これは私の解釈ですが、アイデンティティは大きく2つの柱で構成されており、その1つが「その人独自の価値体系」の確立です。本稿では、価値体系の確立の促進、ひいてはアイデンティティの確立の促進を、目的としています。
この文章の続きを読んで、最後にある問いに答えてもらえば、それだけで、今よりアイデンティティ形成が促進されますよ、という文章を目指しています。なお、この文章だけでアイデンティティの確立が終わることはあり得ません。そんな簡単なものではないです。
価値体系とは
価値体系という言葉を使いましたが、まずはその説明をします。
世の中の様々な事柄について、自分なりの意見・解釈を持っていると、その人は、独自の価値体系を確立している、と私は考えています。例えば、政治について、あなたはどんな意見を持っていますか?日本は多党制ですが、アメリカのような二大政党制とどちらが良いでしょう?また、近年SDGsが流行っていますが、あなたはSDGsに向け、具体的に何をしていますか?それはなぜですか?などなどです。
世の中には、本当に様々なことがありますので、その全てのことに対し、自分なりの意見・解釈を持つことは不可能です。しかし、生きていく上で大事なことに関しては、なるべく幅広く、同時に深く、自分はこう思うんだ、というものを持っていた方が良いです。それができていたらできていた分、「その人独自の価値体系」が確立されている、といえると思うのです。
アイデンティティ形成で大事なもの3選
大事なことを3つ、お伝えします。自分なりの考えを持つ、と言ってきましたが、これまで世の中の誰も考えつかなかった独特の意見・解釈を思いつくのは、基本不可能です。そのため、自分なりの考えとは、世の中にいろいろな考えがあるけれど、自分はこれが正しいと思うというのを、自分で選択する、ということになります。
選択するためには、先に、世の中の多くの考えを知らなければなりません。そこで学ぶべき相手を3つ、提案します。
1.親以外の大人
一番学ぶべき相手は親じゃないの?と思われる方もいらっしゃると思いますが、心理学的には、小学生までで、親からはすでに学び取っている、と考えます。そのため中1・2以降は、親以外の大人から積極的に学んでいくことが大事です。
恩師とか師匠と呼ぶべき存在が欲しいところです。すごく尊敬できる。それでいて大好き、と思える存在です。私は、たまたま、高校生の時にそういう先生に出会いましたが、これはただのラッキーです。そういう先生に出会えなかった人もたくさんいらっしゃるでしょう。でも、そこに事の本質はありません。
まず、そういう先生は、1人では全然足らないのです。パッと数えても、私には8人います。ちゃんと数えたら10人以上いるでしょう。その時その時に就いている先生は、1人か2人ですが、ある程度学び切ったと思ったら、すぐに次の先生を探してきました。今年、私は50歳になりましたが、今でもいます。先生はずっといた方がいいのです。
そして、学ぶべき師は、自ら、一生懸命、探すべきものです。中・高生は無理かもしれませんが、高校卒業後は、自分で師を探し求める姿勢が必要です。たまたま身近にそういう存在がいるなどという運に、人生を預けてはいけません。師の有無・師の良し悪しによって、本当に人生が変わっていくからです。
尊敬でき、大好きな先生が見つかったら、弟子として一生懸命になってください。授業・講義は本気で聴く。出された課題は本気で取り組む。私も長らく先生をしていましたので、よくわかりますが、そういう生徒は可愛いものです。
3つの中で、恩師・師匠・先生が1番大事です。良き師を、自ら本気で探す。その師に可愛がってもらえるくらい本気で学ぶ。これができる人は、人生の成功が約束されたようなものです。
2.本やネット
リアルな先生から学びつつ、物理的に会えない人たちからも貪欲に学びます。夏目漱石が大好きだからといって、どう頑張っても会うことはできません。仕方ないので、本やネットで学びます。その中で、いわゆる座右の書を、理想は複数見つけてください。ずっと手元に置いて、何度も読み直す本です。座右の書を何冊持てるのか?その人のアイデンティティの確立度が測れます。
3.同年代の同性・異性
同性なら親友、異性なら恋人・配偶者です。ここから受ける影響も絶大です。
そのため、なるべく良い人と関わりたい。異論があることを承知で書きますが、『朱に交われば赤くなる』は正しい、と私は思います。親御様にお伝えしたいのですが、私はこの意味でも、進学先はものすごく大事だと思っています。
あと、個人的なことを書くと、私は、1と2は相当やった自信がありますが、3に関しては、甚だ心もとないです。また、1をちゃんとやると、同じ師の元に集う学友がいますので、そこで充分カバーできます。1番頑張るべきは1だと思います。
とても大事な6つの問い
初めに
随分、前振りが長くなりましたが、ご容赦ください。(一応、必要だと思って書いてはいます。)
ここからが本番です。
アイデンティティとは、世の様々な事柄についての、独自の意見・考えを持つことを含みます。世の中には、本当に様々なことがありますが、その中でも6つ、全ての人にとって外せない問いがあります。
その問いに対して、自分なりの答えを、ノートに書くなりPCで打つなりしてください。
注意点
- 文字数は多い方が良いです。1行2行で終わらないでください。
- 記載年月日も残してください。
- このワーク後、書き直してもらっても構いません。むしろ、自分で納得いく答えが見い出せるまで、何度も何度も書き直してください。そのため、私はWordでやりました。
- 本やネットを調べてください。人に問うてください。その上で、自分で考えてください。たくさんの情報を集め、その中から最適解を自分の頭で見つけ出す。仕事も同じですが、これができる人は優秀です。
- 親御さんや上司の方に、時間を制限されている場合、一旦、絶対に書き切ってください(1問30分)。後から直すのは全然良いのですが、何も書かないというのがまずいです。
- 1回で一気に6問やらないでください。中高生なら、夏休み・冬休みの度に1問ずつが良いと思います。すると、全部やるのに3年かかります。しかも受験が近いときは、やはり受験勉強優先です(ただ、中3・高3の夏でも、遊びほうけている人はやってください)。そうすると、3年から5年くらいかけて、全部の問いに答える感じです。大学生以降は、1ヶ月に1個で、半年で終わらせるペースが良いと思います。少なくとも、どれだけ詰めても、1週間に1個までにしてください。1つ書いてから時間を取ることも、ワークの一部です。
- それぞれの問いの欄に、その大問を考える上でヒントになる小問をたくさん書いています。その小問に答えていくことで、大問に答えるようにしてください。
1つ目の問い あなたの長所と短所
どんな人間にも、必ず長所と短所があります。どちらかだけということは、絶対にありません。もしあなたが、短所はいっぱい書けるけれど、長所が思いつかないとしたら、短所の裏側にある長所を探してください。例えば、消極的で、自分の意見を全然言えないという短所を書いたとします。その短所の裏側にある長所は何でしょう?人の意見をちゃんと聞ける、とか、奥ゆかしい、とかです。長所ばかりという人も、逆のことをしてください。
人間は、長所と短所が、だいたい同じ数あると思っています。だいたい同数になるまで、考えてください。
2つ目の問い 人生とは?
人は、なぜ生まれてきたのでしょう?あなたは何故生きているんですか?たまたま生まれてきただけで、意味などないのでしょうか?あなたが果たすべき使命・ミッションはないのでしょうか?あるとしたらそれは何でしょう?ただ食べ、ただ寝るだけの時間なのでしょうか?もしそう思われているなら、本当に、それであなたは良いのですか?
3つ目の問い 人間とは?
性善説と性悪説という考えがあります。人間は、本質的に善でしょうか、悪でしょうか?人間に優劣はありますか?性格の良し悪しはありますか?頑張れば、誰にも可能性はあるのでしょうか?頑張っても無駄な人もいるのでしょうか?
4つ目の問い 勉強/仕事とは?
学生なら勉強/社会人なら仕事で考えてください。
勉強・仕事はしないといけないものだとするなら、それは何故でしょう?何で、やりたくもないことをしないといけないのでしょう?やらないとどんなことが起こりますか?あなたは一生懸命やっていますか、それともぐーたらやっていますか?あなたは何故、一生懸命やっているのですか?あなたは何故、一生懸命やらないのですか?
5つ目の問い 恋愛/結婚とは?
未婚者なら恋愛/既婚者なら結婚で考えてください。
恋愛・結婚は必要ですか?それは何故ですか?未婚者に言っておきますが、結婚生活はかなりしんどいものです。楽しいのは初めの数年だけです。こんなしんどいことを続けなければならないのでしょうか?その理由は?恋愛・結婚から得られるものは何ですか?失うものは何ですか?
6つ目の問い 人は死んだらどうなるか?
無になるのか?天国か地獄に行くのか?輪廻転生するのか?そう考える理由は何ですか?その考えに、あなたはどのくらい確信がありますか?
最後に
皆様、じっくりとでいいです。しかし真剣に考えてください。この6つの問いに真剣に向き合うことが、あなたのアイデンティティ形成を促進し、あなたの成長を促し、あなたの人生を少しだけ幸せにしてくれます。
では、頑張ってください。
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