心理学⑦ 交流分析 禁止令

本稿は、交流分析の中の禁止令についての解説記事ですが、もしあなたが、ご自身を成長させるために来てくださったならば、
心理学① 自己理解を深めるためのワークシート | Jアカブログ (j-academia.com)
を先にお読みいただき、そのワークの一環として、本記事をお読みいただくと、より効果的です。本記事は、単に理論を解説するだけでなく、お読みいただくことで、自己理解・自己成長が図れるものにしたい、という意図で記しております。そのため、自分に特に強くかかっている禁止令は何かを、自己分析しながら読み進めていただくとありがたいです。

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禁止令とは

禁止令ついての説明に入りますが、もしあなたが、TAの自我状態(CP~RC)をご存じない場合、先に「自我状態とは」をお読みください。そこはご理解されている前提で、この先の説明を記します。

子供の性格・パーソナリティ形成は、特に主たる養育者(母親など)が、どのようにその子に関わるかによって進んでいきますが、その関わりは、大別すると、言語的なものと非言語的なものに、分けることができます。そのうちの非言語の養育態度によって形成されるものが、禁止令です。

例えば、赤ちゃんを寝かしつけるために、お母さんが抱っこしていた。そのときに、お母さんが子供と視線を合わせることなく、何度もため息をついていた。その時に、赤ちゃんによっては、❝この人は、嫌々、私のことを抱っこしている。私のことが邪魔なんだ。私は、存在してはいけないんだ❞と思うかもしれません。こうしたことの繰り返しによって、「存在するな」という禁止令が形成されます。

この子は赤ちゃんなので、まだ言葉はしゃべれません。そのため、上記の❝  ❞内のように、言語で、明確な理解をしたわけではありません。非言語で、なんとなくそう思い込むのです。しかも、このお母さんは、その日、職場で上司から理不尽に怒られ、それで気持ちがふさいでいたかもしれません。その場合、赤ちゃんに微笑みかけなかったり、ため息をついていたのは、その職場での出来事が原因であって、赤ちゃんへの愛情が足りないからではありません。しかし赤ちゃんなので、お母さんの状況を理解するほど知能が発達していません。自分が悪いと誤った思い込みをします。このように、非現実的で、非論理的な思い込みによって、禁止令が形成されることもあります。

そして、お母さんも赤ちゃんも、どちらも言葉を使っていません。共に非言語の話です。つまり禁止令とは、お母さんのC(FC/AC/RC)から発せられた非言語のメッセージを、赤ちゃんがCで受け取り、Cで思い込むことによって、Cの中につくられるもの、といえます。

なお、1回だけの思い込みによって、禁止令が形成されることはまずありません。禁止令は、0~3歳で大本がつくられ、8歳ごろまでに完成すると考えられています。10年弱、結構な長期間に渡って、養育者から繰り返し発せられる非言語のメッセージを、繰り返し受け取ることによって、子供の中に徐々に形成されます。

12個の禁止令

存在するな

存在してはいけない・生きていてはいけない・その場にいてはいけないという命令です。交流分析では、自殺やうつ病の大きな原因と考える禁止令です。

ただ、ここで特に強調しておきたいのは、この禁止令は、実はほとんどの人がもっているという点です。よく、ほんの一部の人だけがもっている特殊な禁止令と誤解されますが、ほとんどの人は、程度の差はありますが、「存在するな」をもっています。

おまえであるな

男の子の跡取りが欲しい旧家に、女の子が生まれた場合、明確に言葉に出さなかったとしても、表情などの非言語な態度で、「お前が男の子だったらなあ」という

メッセージが、養育者から発せられたりします。このようして、本来の性とは別の性であらねばならないという禁止令がかかります。

また、「近所の〇〇君はもうハイハイできるのに、あんたは遅いわねえ」というメッセージを、繰り返し受け取ってしまった場合、「自分ではダメなんだ。自分ではない誰かにならねばならない」と、自分自身であることを禁止してしまうこともあります。「おまえであるな」は性別に限った禁止令ではありません。

子供であるな

子供らしさ:大声で騒いだり、買って買ってと駄々をこねたり、わーと泣いたりすることを、厳しく怒られる家庭で育てられると、この禁止令がよくかかります。また、これがかかっている人は、リアルな子供と関わる際に、ぎこちなさを感じやすいです。

成長するな

上のお兄ちゃんが、しょっちゅう『あんたはお兄ちゃんなんだから』と怒られていた場合、「子供のままでいれば安全だ」と思い込むかもしれません。実年齢に比べやたらと幼い人は、この禁止令がかかっている可能性があります。

成功するな

親の、(多くの場合無意識の)嫉妬によって、形成されると考えられています。わかりやすいのが、成績優秀な子供に対する、あまり学歴が高くない親の嫉妬です。この禁止令がかかった人は、入試など「成功が決定する本番」に弱かったり、一度つかんだ成功を台無しにする失態を犯す傾向があります。

何もするな

この禁止令は、不安感の強い養育者によって与えられるとされています。要は過保護・過干渉です。本来、子供は冒険が大好きです。あれこれやってみようとします。しかしたびたびそれを制止されると、「この人(母親など)は、自分が何もしないと愛してくれる」と思うかもしれません。

重要であるな

上2つの変形です。自分が重要だと思う事柄だと緊張過多に陥ったり、自分が重要だと思う立場に立つと失敗したりします。

属するな

集団の中にいると落ち着かなかったり、自分なんかがここにいてもいいのだろうかと強い不安に苛まれます。家族の中に、しっかりとした居場所が確保できないと、この禁止令が形成されます。

近づくな

身体的接触が少ない養育者に育てられると、この禁止令を持ちがちです。

健康であるな

病気の時だけすごく優しくしてくる養育者に育てられると、この禁止令を持ちがちです。わかりやすい例が、ご両親が共働きで、かなり幼少の頃から保育園に預けられている。病気の時だけお母さんが仕事を休んで、自分とずっと一緒にいてくれる、という場合です。病気がちの人の中には、この禁止令が強くかかっている人がいます。

考えるな

子供の考えをよく馬鹿にする養育者に育てられると、この禁止令を持ちがちです。

感じるな

TAでは、人は生まれながらに、喜び・恐れ・悲しみ・怒りの4つの感情を持っていると考えます(基本感情・本物の感情)。その全て、または一部を感じることが困難になる禁止令です。その感情を感じたときに、養育者に怒られる・嫌な顔をされたりすることが繰り返されると、「感じるな」がかかります。その程度が強いと、失感情症という精神疾患になります。

12個以外の禁止令もある

例えば「近づくな」の変形として、「信頼するな」があるなど、厳密にいえば、禁止令は無数にあります。そのため、ここに挙げた禁止令(の名称の言葉・「近づくな」等)が、どれもしっくりこない場合、「~するな」という禁止の命令の言葉であれば、ご自身で作っていただいても構いません。

禁止令の緩め方

次の投稿でドライバー・拮抗禁止令というものを扱います。それとセットで記します。

1番問題な禁止令を見つける

あなたにとって、今、1番、問題になっている禁止令は何でしょうか?1つだけ選んでください。

全ての人が、多くの禁止令をもっています。しかし自己成長という観点で考えると、今、最も直接的に問題になっている禁止令から緩めにかかった方が効率的です。

更に言うと、次稿で扱う5つのドライバーも合わせた全17個の中から、1つだけ選択した方がいい、と私は考えています。そのため、取り合えず禁止令は1つだけ選び、次稿のドライバー5つの中から選んだ1つと天秤をかけて、それを集中的に緩めにかかってください。

お勧めの本

今回は以上です。なお、本稿をお読みいただき、交流分析についてもっと知りたいな、と思われたら、こちらから、私がお勧めする本をご購入いただけると嬉しいです。新品も中古も用意してあります!

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。

心理学④ 交流分析 自我状態 エゴグラム | Jアカブログ (j-academia.com)




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