本稿は、交流分析の中のストロークについての解説記事ですが、もしあなたが、ご自身を成長させるために来てくださったならば、
心理学① 自己理解を深めるためのワークシート | Jアカブログ (j-academia.com)
を先にお読みいただき、そのワークの一環として、本記事をお読みいただくと、より効果的です。本記事は、単に理論を解説するだけでなく、お読みいただくことで、自己理解・自己成長が図れるものにしたい、という意図で記しております。そのため、以下でご説明する「ストローク経済の法則」の中で、ご自身はどの法則が強くかかっているかを、自己分析しながら読み進めていただくとありがたいです。
ストロークとは
ストロークの定義としては、『存在認知の一単位』となります。
例えば、AさんがBさんに挨拶をしたとします。この場合、AさんはBさんの存在に気づいたから挨拶した訳です。相手の存在を認知したことによって発せられる言動が、ストロークです。そのため、Bさんの存在を認知したことで発せられたAさんの挨拶は、ストロークだといえます。
ストロークには、「褒める」などの肯定的なものもあれば、「叱る」などの否定的なものもあります。また、言葉だけでなく、「肩を叩く」などの身体的なものもあります。
ただ、本稿の主旨に則すため、以降、ストロークをもっと限定して、『褒める・手伝う・聴く・感謝する』こととします。上段までの定義を覚えるのが面倒だな、と思われる方は、ストロークは主にこの4つのことだ、と理解していただいて大丈夫です。
そして、ストロークは「心の食べ物」と形容される、人間にとって絶対に必要なものです。幼少期から、充分なストロークを与えられた人の精神は、健全に発達します。もちろん自己肯定感も高くなります。しかし、供給されるストローク量が不足すると、徐々に問題行動を取るようになってしまい、自己劣等感に苛まれます。
前回の自我状態を使って説明すると、NPの高い養育者に育てられると、FC(=自己肯定感)が高いままでキープされます。逆に、養育者のNPが低いと、FCはどんどん下がり、、ACかRCがどんどん上がってしまいます。なお、AC・RCのどちらがより上がるかは、遺伝要因だとされており、どちらが良い・悪いはありません。
ストローク経済の法則
概論
クロード・スタイナーが提唱した考えで、5つの法則があります。
この法則は、ストロークが不足→FCが低下→AC/RCが上昇すればするほど、きつく心にかかるものだとされています。要するにAC/RCが高い人ほど、この法則を強く持っています。
また、この法則がきつく心にかかればかかるほど、どんどん心の中のストローク残高が減っていき、ストローク欠乏・心の栄養失調状態になっていきます。そして、CPからRCの、プラス面が減っていき、マイナス面が増えていきます。つまり、長所が消え、短所が目立つようになります。
なお、ここまでの説明の中にも、AC・CPなどの2つのアルファベットで構成された用語が出てきます。これは交流分析の基本である自我状態というものです。もし自我状態をご存じでない場合、ご参照ください。自我状態
では、ここから各法則の説明に入ります。自分に1番当てはまるものはどれかを、考えながら読み進めてください。
与えるストロークをもっている時に、それを与えるな。
相手に、褒めるべき点を見つけても、それを与えてはならないという禁止がかかります。この1つ目の法則がきつくかかっている人は、他者を褒めることが苦手です。
ストロークが必要な時に、それを求めるな。
「もっと褒めて欲しい」「手伝ってほしい」「話を聴いて欲しい」「感謝してほしい」・・・。他者に、率直に、こうお願いできる人は幸せです。この2つ目の法則がきつくかかればかかるほど、それができません。
欲しいストロークが来ても、それを受け入れるな。
褒められる→嬉しい。これが自然な反応です。しかし、この法則がきつくかかっている人は、そのストロークを信じません。『いや、そんなことはない』。そして嬉しい気持ちも急いで打ち消します。せっかく「心の食べ物」がやってきたのに、自らそれを捨ててしまっている状態です。
欲しくないストロークが来ても、それを拒否するな。
もらっても嬉しくないストロークもあります。例えば、相手の褒め言葉に誠意が感じられなかったり、自力でやりたいのに、強引に手伝おうとしてくる場合などです。FCが一定以上健全に高ければ、『私はそうは思わない』とか、『いや、自分でやるから結構です』と、相手に伝えます。しかしこの法則がきつくかかっている人は、それがなかなかできません。
自分自身にストロークを与えるな。
大人になればなるほど、ストロークは、他者からされることを期待するのではなく、自分で自分に対して行えるようになりたいです。自分で自分を褒めていく。自分の苦しい気持ち・しんどい気持ちは、自分で聴き、癒していく。
この辺りは、後日、もっと詳しく説明させていただきますが、この法則がかかっている人は、必要不可欠なストロークを、自分で用意することができず、他者から与えられることを期待している、つまり『依存』状態に陥ります。子供はそれで当たり前です。子供ですから。ただ大人は、『自立』した存在であるべきなので、徐々に、他者にストロークを期待するのではなく、自分で自分にストロークができるようになれると良いです。私の感覚では、特に中年期の途中から(『中年の危機』以降)は、この法則を打ち破っていく努力が大切になります。
ストロークの2つのポイント
ストロークには、2つ重要なポイントがあります。
作為的なストロークに意味があるのか?
『本来、褒めるという行為は、心の内から自然と発せられるべきものだ。だから、こんな作為的なストロークは、相手にも失礼だし、無意味だろう』と考えられる方がいらっしゃいます。私もそう思っていました。
しかし、交流分析のセミナーでよくあるワークで、参加者同士がストロークを交換し合う、というものがあります。これは、セミナーの中で、講師の指示で行われるストロークですので、作為しかありません。しかし、実際にストロークをされると、日常で行われるストロークと変わらず、嬉しいです。
作為あるストロークと作為ないストロークでは、その価値に差はない。体験上、その通りだと思います。
情けは人のためならず
中学受験・高校受験で、ものすごくよく出題されることわざですが、ストロークの解説でも、しょっちゅう使われます。
そもそもこのことわざは、他者に情けをかけると、巡り巡って、自分も情けをかけてもらえる。だから、自分のために、他者に情けをかけた方がいい、という意味です。ストロークにも全く同じことが言えます。
少し難しい話ですが、他者にストロークを行うと、多くの場合無意識に、「人に親切にできる自分は優しいな」と、自分に対してもストロークが発せられます。つまり、他者にストロークを1回すると、自動的に自分にもストロークを1回することになります。ここで、回数的にチャラです。更に、営業やネットビジネスの世界で有名な返報性の法則(こちらが何かしたら、相手も何かしてくれるという法則)が働くので、時々、ストロークをした相手から、ストロークが返ってきます。これで、回数的にも得することになります。
ストロークが苦手な人は、公平性・平等を重視します。こちらが10回ストロークしたなら、お前も10回返せ、という感じです。しかし、親・経営者・上司・先生などの上長者と、子供・部下・生徒では、上長者の方が年齢も高く、大人なので、こちらが10回ストロークをしても、1回か2回しか返ってこないものです。確かに不公平といえば不公平です。
しかも、対等な立場の場合、特に夫婦などでは、どちらも大人なのだから、同等の見返りを求めるのは、ある程度「正当な要求」だと思います。しかし現実問題、NPの高さには個人差が大きいので、こちらが10回やっても、1回も返ってこないということが起こります。
それで嫌になって、ストローク・NPを高める努力を止めてしまいます。
私は、その不公平感がどうにも気に入らず、ストロークを行う課題(後述)をやれなかったです。ただ、それでも意志の力で、自分からストロークをするようにしていくと、①他者にストロークをすればするほど、ほんの少しの時間ですが、幸せな気持ちになれます(自分で自分にストロークが発せられたから)。そして、②徐々に「自分は優しいな」と自己肯定感も高まります。この2つのメリットが大きいため、少しずつ見返りを求めず、ストロークができることが増えてきました。相手のためではないです。自分が2つのメリットを得るために、私はストロークをするようにしています。
相手のためと思うと、どうしても見返りを期待してしまい、イライラが募ります。この意識の切り替えができると、それまでよりぐっと生き易くなります。
ストロークができる自分の創り方
こちらに詳しく記しました。ぜひ月5回を目標に頑張ってみてください。
NPを高めるためのストローク課題
まとめ
ストロークは心の食べ物です。心が飢えれば飢えるほど、人は様々な問題行動を取るようになります。
ぜひ、お子様・部下の方・生徒さん達にストロークをしてください。ストロークができればできるほど、勉強・仕事へのモチベーションが上がり、成績・売上・利益・定着率も上がります。特に18歳未満の方を対象としたとき、その人の自己肯定感が上がる=その人の人生をより良くしていけます。
そして、自分で自分にストロークをしてください。
もしあなたの周りに、ストロークを頻繁にしてくれる人がいたとしたら、私はとても注意が必要だと思います。人は本来、自分のことは、物理的にも心理的にも、自分でできた方が良いのです。自分のことは自分で何とかできればできるほど、自立できる≒大人になっていけます。他者からのストロークを期待するのではなく、自分にストロークできる優しさを、自らの内に育んでいく。この努力が、幸せへの近道だと思っています。
交流分析をもっと深く学ぶための、お勧めの本
今回は以上です。なお、本稿をお読みいただき、交流分析についてもっと知りたいな、と思われたら、こちらから、私がお勧めする本をご購入いただけると嬉しいです。新品も中古も用意してあります!
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
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