心理学②
マズローの欲求段階説

皆様、こんにちは。

本稿は、マズローの欲求段階説についての解説記事ですが、もしご自身を成長させるためにマズローをお調べなら、
心理学① 自己理解を深めるためのワークシート | Jアカブログ (j-academia.com)
を先にお読みいただき、そのワークの一環として、本記事をお読みいただくと、より効果的です。本記事は、単に理論を解説するだけではなく、お読みいただくことで、自己理解・自己成長が図れるものにしたい、という意図で書かれております。そのため、現在、自分はどの欲求段階にいるかを、自己分析しながら読み進めていただくとありがたいです。


では、始めていきます。

アブラハム・ハロルド・マズロー(Abraham Harold Maslow)の欲求段階説は、数ある心理学の理論の中で、おそらく最も有名で、特にビジネスシーンに広く浸透しているので、既にご存じの方も多いかと思います。ただ、多くの解説記事にあるような教科書的な記述ではなく、読むことによって自己理解が深まるような文章を目指します。そのため、マズローはある程度わかっているよ、という方も、お読みいただけると嬉しいです。

スポンサーリンク

欲求段階説の基本

まずはさらっと基本を押さえます。

よくある図を、ネットから引っ張ってきました。ただフリー画像なので、用語は私が平素使うものにさせてもらいます。

欲求段階説の考え方

  • 人間の欲求は5つ(6つ)ある。
  • より低次(図の下の方)な欲求が満たされると、その上の欲求を持つようになる=より低次な欲求が満たされていないと、その上の欲求は持たない。


生理的欲求=生存欲求
生きたい・生存したいという欲求。食欲・睡眠欲・排泄欲なども含む。

安全の欲求=安全欲求
身体・心の安全を求める欲求。

社会的欲求=親和欲求
人間関係に関わる欲求。人から愛されたいという欲求。どこかに所属しているという安心感を求める欲求。

承認欲求=尊敬欲求
人から尊敬されたい・尊重されたいという欲求。なお、他者からの敬意を得たいという欲求が満たされると、自分で自分を誇りたいという欲求に切り替わる。他者評価から自己評価への移行が起こり始める。

自己実現欲求
自分固有の能力や個性、可能性を発揮したいという欲求。尊敬欲求の後半に芽生えた他者評価から自己評価への移行が、より確かな形で起こる。

各欲求のポイント解説

生存欲求・安全欲求

もし生存欲求が満たされていない状況だとしたら、この記事を読まれていることはないので、生存欲求についてはこれで終わります。

安全欲求が満たされていない=今すぐ死の危険はないけれど、身体・精神の危機にあるとしたら、すぐにそこから抜け出すことをお考え下さい。

生存欲求・安全欲求が満たされていない状態は、自己成長・自己理解どころではないので、他者(警察・児童相談所等を含む)の力を借りてでも、今の危機的状況から抜け出すことを最優先してください。

ここからは、その2つが満たされた後の話をします。

親和欲求・尊敬欲求

多くの人の悩みは、人間関係か、勉強・仕事に関わることです。それをマズローの理論に照らすならば、親和欲求が満たされていない苦しみか、尊敬欲求が満たされていない苦しみだと言えます。自分はどちらがより満たされていないか?自分の心の奥底では、愛か尊敬、どちらを強く求めているか?を、じっくり考えてみてください。

ここで、2つの問いを用意しました。

  • 『私(これを読まれているあなた)は、同年・同性と比べて、ある程度納得できるレベルで、優しい』と思いますか?
  • 『私は、同年・同性と比べて、ある程度納得できるレベルで、優れている』と思いますか?

この2つの問いに対しての答えがNoならば、親和欲求か尊敬欲求が、充分に満たされていないと考えて良いと思います。

親和欲求より尊敬欲求を求める人へ

私もそうだったのですが、親和欲求を満たすことを諦め、尊敬欲求を強く求める方がいます。もう少しかみ砕いた言い方をすると、『自分はどうせ人とはうまくやれない。だから権力・権威を得て、人を従わせるんだ』という感覚です。経営者や政治家、学者や医師などに多いタイプで、実際に有能な人が多いです。特徴としては、権力・権威、お金・地位に固執する。威張る・見下す、などです。

このタイプの方に、あなたは愛を求めていますか?と問うと、「そんなものは要らん。価値がない」と言われることがあります。もしあなたもそうならば、本当に愛を求めていないのか、今一度、よくお考えになっていただきたいのです。

私は31歳の時に、あるワークショップで、実は心の深い部分で、強く、本当に強く、愛を求めていることに気づきました。それまでそんなことは全然わかっておらず、21歳で起業して以来、とにかく会社を大きくすること・お金を儲けることに執着していました。しかし、それなりにビジネスで成功を収めても、なぜか心は晴れない。当時、その理由がわからなかったのですが、マズローの理論で考えたら明白でした。親和欲求を満たしていないのに、尊敬欲求を満たすことは不可能だからなんです。

「もっと人から好かれたい」

「自分でも、自分は優しいと思いたい」

このタイプの方の中には、愛を求めることを「弱さ」と捉え、そんな女々しい想いを持つことを、無意識のうちに、自らに禁じている方がいます。しかしマズローの理論でいえば、こう思うのは本能なのです。愛を求めることを、自らに許していただけると嬉しく思います。

いかがでしたか?

私と同じタイプの方は、自分の心が本当は何を求めているか、じっくり時間をかけて、お考えになってみてください。

なお、『自分はどうせ人とはうまくやれない。だから権力・権威を得て、人を従わせるんだ』というのは、ほとんどの場合、意識的に決めたことではなく、無意識下で、ある意味心が勝手に、決めたことです。しかもその決断の原型は、0~3歳でなされたと考えられています。

そのため、例えば、何で自分はこんなに冷酷なんだろうと悩まれていたとすれば、無意識下の話で、しかも幼児期のことなので、本人には責任がない、と私は思うのです。「もしそうだったとしても、仕方ない」。その弱点を改善する努力は必要ですが、そうした心根を持ってしまっていること自体を、今のあなたが許してあげていくことも大切です。

自分に優しくした度合いでしか、他人には優しくできない。

1番大事にするべき相手は、配偶者でもなければ、自分の子供でもありません。それは自分自身だ、と心理学では考えます。そして「優しくする」とは、自身の短所や欠点を、許していくことも含みます。

尊敬欲求を諦めている人へ

『自分は、どうせ何をやっても上手く行かない』『自分は能力が低い・頭が悪い』などと思われる方は、ぜひ続きをお読みください。

このタイプの方たちは、奥ゆかしく、謙虚で、「良い人」が多く、人間関係は基本的に良好です。ということは、親和欲求はある程度満たされていらっしゃいます。同時に、上段のような劣等感をお持ちです。

マズローの理論だと、一定以上良好な人間関係を築き、自分の居場所を確保すると、本能的に・無意識レベルで、自然と『他者から尊敬されたい』という欲求が湧いてくるようです。しかしご自身の能力に自信がないが故に、一歩を踏み出すことができず、身動きできない状態をじっと続けていらっしゃる方が多いように感じます。

ぜひこの機会に、自分の心は、本当は何を手に入れたがっているかを、じっくり探ってみてください。

『スポットライトを浴びたい』

『人から、褒められたい・認められたい』

『自分で、自分は優れていると思いたい』

自分が本当に求めていることに気づいていく。まずはそこから始められるのはいかがでしょうか?


なお、『自分は能力が低い・頭が悪い』と思われている場合、そう思っているのは、あなた自身だということも、知っておいてください。つまり、このような劣等感は自己認知の問題なのです。そのこともわかった上で、続きをお読みください。

もしあなたが、このような欲求をお持ちならば、次にやることは明確です。他者から尊敬されるだろうと、自分で思う成果を、本気で目指すことです。尊敬欲求を満たすには、目に見える成果が必要です。学生さんなら、学歴・成績/社会人なら、仕事上の成果でしょうか。それらを本気で取りに行く。しかも、おそらく1回だけの成功では、自己認識は変わらないです。『たまたまできた』とか、『周りの人に助けられた。だから自分は相変わらず力がない』等と、思ってしまいがちです。『自分は優れている』と、自分で思えるまで、成果を積み重ねてください。何度失敗しても問題ありません。失敗を繰り返しても、最後に成功すれば、それは成功なのです。

少し話が逸れますが、私はおそらく多くの人より、一般的な褒める・褒められる効果を低く見ています。他者からいくら褒められても、自分でそう思っていない場合、右の耳から左の耳に抜けていってしまうからです。自分を褒めても良いと、自分でも思えるだけの成果を出し、実際に、自分で自分を褒めていく。これが、とても大切な「褒め方」です。

また、専業主婦の方で、このような気持ちをお持ちの場合、仕事をしてみることもご検討ください。パートでも構わないです。現実問題として、仕事をしないと・社会に出ないと、尊敬欲求は満たしにくいです。

自分で自分を認められるだけの成果を、貪欲に求めてみてください。いくつかの成果を積み上げた時、あなたの人生は、今とは大きく変わっています。

自己実現欲求

『自分は、同年・同性と比べて、ある程度納得できるレベルで、優しいし、優れている』と思えると、親和欲求→尊敬欲求と満たしているはずですので、次の自己実現欲求を持つようになります。

ちなみにマズローは、その著作の中で、自己実現している人の割合は、5~30%で、国や環境などによって大きく数字が異なる、と言っています。個人的な感覚では、5%もいるかなあ、と思いますが、マズロー先生ご自身のお言葉なので、まあ、そうなんだろう、と、一旦思っておきます。

まず、『欲求段階説の基本』の補足をします。「尊敬欲求の後半に芽生えた他者評価から自己評価への移行が、より確かな形で起こる」の部分です。

自己実現欲求の段階にいる人は、一定以上の人間関係構築能力と仕事力をお持ちです。つまり、劣等感が少なくなっているため、他人の目をあまり気にしません。他者にどう思われるか?よりも、自分がどうしたいか?自分でそれは誇れるものなのか?が、優先される状態にいます。そのことを、「尊敬欲求の後半に芽生えた他者評価から自己評価への移行が、より確かな形で起こる」と表現しています。

自分の人間性には自信がある。能力にも自信がある。しかし今の自分は、それを活かし切れる環境にない。だから、そういう環境(仕事内容など)を求める。自己実現したいという欲求はこんな感じです。

なお、金銭欲や名誉欲から、新たな環境を求めているとすると、それは自己実現欲求ではなく、尊敬欲求です。自己実現欲求は、十分な収入や社会的地位を捨ててでも、自分の個性を発揮したいと思う欲求なのです。収入や地位を捨てるという決断は、時に、他者から大きな批判を受けます。しかし、他者評価からある程度自由になっているので、そうした決断も可能になります。

そして、そうした環境を手に入れると、自然と、次の自己超越に向かいます。もし、自分のやりたいことよりも、社会の役に立ちたいという欲求が優先されないとすると、人間性・能力・環境のいずれかが、まだ不十分な状態だと思います。

超越的な自己実現の欲求=自己超越欲求

欲求段階説は、ほとんどの教科書では5段階ですが、マズロー自身、研究を進めていく中で、自己実現している人の中の一部に、自己実現とは異なる欲求に突き動かされている人たちを発見します。その欲求のことを自己超越欲求と言います。

自己超越に至っている人は、個人的な欲求は、概ね満たされています。そのため、興味・関心が、自分から社会に向かいます。つまり「社会の役に立ちたい」という崇高な欲求を持つようになり、それが個人的な欲求より強くなっている状態です。

ちなみに自己超越の段階にいる人は、2%だそうです。ここも、そんなにいるか?と思いますが、マズロー先生が言われていることなので、このまま論を進めます。

そして、自己超越に至るためには条件がある、マズローは言っています。それは「至高体験をしていること」です。ちなみに、ウィキペディアは、(たぶんわざと)その辺りについて、ちゃんと書いていませんが、簡単に言うと、自己超越は宗教的な色彩が濃くなる欲求段階です。

心理学という学問は、ドイツで生まれ、アメリカで発達した=ユダヤ教やキリスト教の影響を強く受けています。そのためマズローに限らず、心理学の一部には宗教思想が見られます。自己超越や、次に投稿するエリクソンの超越などは、その代表だと思います。ただ、どうしても宗教となると、アレルギー反応をされる方がいらっしゃいますので(ちなみに私は無宗教です)、もしこれ以上の詳細を書くならば、有料noteにしておきます。

問い あなたはどの欲求段階にいらっしゃいますか?

ここで自己分析に入ってください。

じっくりお考えになって、『自己理解を深めるためのワークシート』をお持ちの方は、入力してください。

マズローの欲求段階説は、有名な理論だけに、その後も多くの研究者が研究を進めていますが、その中には、親和欲求がまだ完全には満たされていないけれど(まだ親和欲求を持っているけれど)、ある程度、尊敬欲求も同時に持ち始めている人もいる、という意見があります。つまり、複数の欲求が、1人の人間の中に、同時に存在し得る、という考えです。そのため、自分は複数の欲求を持っている、と思われる方もいらっしゃいます。そういう方は、その中でもどれが特に、今の自分の人生のボトルネックになっているかを、考えてみてください。

  • 人間関係構築能力なのか?(親和欲求)
  • 仕事力なのか?(尊敬欲求)
  • 環境なのか?(自己実現欲求)
  • 唯物論的な価値観なのか?(自己実現欲求)

どれか1つの欲求にフォーカスし、それを集中的に鍛えていくやり方を、このワークでは推奨しています。もし迷うならば、より低次な欲求を選択してください。

以上です。めちゃくちゃ長くなってしまいましたが、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

今回は、これで終わります。

補足
念のため、教科書的な説明が欲しい方のために、ウィキペディアのリンクを貼っておきます(自己実現理論 – Wikipedia)。また、より詳しく欲求段階説を勉強したいという方のために、『人間性の心理学』という本を推薦しておきます。結構難しい本ですが、マズロー先生の代表的な著作なので、本格的に勉強されたい方にはお勧めです。




Twitter・noteでJアカブログの更新通知を行っています。本記事を読まれ、気に入ってくださった方は、ぜひフォローをお願いいたします。(下のTwitter・noteアイコンから公式アカウントに飛べます。)

当ブログは基本的にリンクフリーです。リンクを行う場合の許可や連絡は不要です。
ただし、インラインフレームの使用や画像の直リンクはご遠慮ください。

心理学
スポンサーリンク
株式会社Jアカデミアをフォローする
Jアカブログ

コメント