こんにちは。
前回の記事で、『良いことをやったら褒める/悪いことをやったら叱る』という話をしましたが、今回は『褒める』について、深堀りしていこうと思います。
子育て・人財育成・教育① 1番大事なこととその対策 | Jアカブログ (j-academia.com)
褒めることが苦手な人の、2つのタイプ
あなたは、褒めることが得意ですか?
私はとにかく苦手です。更に言うと、褒めることができない自分に対して、長年、強く劣等感を感じていました。
褒めることが得意な人は、他者から好かれます。“クラスの人気者”には、褒めることが得意な人が多くいます。一方、褒めることが苦手な人は、影が薄く、いてもいなくても一緒、となるか、敵をたくさんつくる人が多いように感じます。自分も正にそうでした。それ故に、人間関係構築能力の低い自分に対して、劣等感を強く感じていたのです。
精神分析の視点だと、褒めることが苦手な人は、2つのタイプにわけることができるようです。
褒めるのも苦手だけれど、叱るのはもっと苦手なタイプ
このタイプの方については、次の『理想的な叱り方』で詳しくお話ししますが、ここでもいくつか記しておきます。
- このタイプの方は、潜在的には、褒めることに対する適性が高く、少しの訓練で、割合楽に得意になれます。私のようなタイプからすると、うらやましい美点です。自信を持っていいと思います。
- 褒めること、そして叱ること共に、このタイプの方に必要なものは、勇気です。勇気をもって、褒める・叱る。意志の力で自らを叱咤し、褒める・叱ることができると、人生が大きく変わっていきます。
しょっちゅう怒るけれど、褒めることは苦手なタイプ
心理学には様々な理論・学説がありますが、その何割かは、自分のことをより深く知ること≒成長とみなします。そこで、私も含めこのタイプはなぜ褒めることが苦手なのかを、精神分析的に考えてみましょう。
褒めることより叱ることが多い人には、責任感が強いタイプが多いです。子供・部下・生徒をより良くしなければ、とか、会社・自分の部署の業績を上げねばならないと強く思っています。結果を出さねばと強く思っていると、結果を出す上で、その妨げになる行動や失敗をした子供・部下・生徒に、腹が立つのは当然です。
そして、完璧主義の人が多いのも特徴です。完璧=「失敗・不備がない」ことですので、できていることより、できていないことに目が向いてしまいます。そうなると、どうしても褒めることより叱ることが多くなってしまいます。
ただ、ここでお伝えしたいことがあります。
責任感が強くて、完璧主義であることは、ひたすら悪いことなのでしょうか?
私はそんなことはないと思うのです。特に、親・経営者・上司・先生という立場ならば、責任感が強いことは美点・長所です。責任感は、いわゆるリーダーシップの根幹なので、実際、リーダーシップが強く要求される職種である経営者・先生の多くは、責任感が強く完璧主義です。
心理学では、短所・欠点を改善したいならば、その裏側にある長所・美点もしっかり認識した方が良いと考えます。「怒ってばかりで褒められないというのは、良くないことだけれども、強い責任感・高いリーダーシップという長所を持てていることの代償だから、ある程度仕方ないよね」。だから、もう褒められなくてもいい、ということを言いたい訳ではありません。褒められないのは、親・経営者・上司・先生にとって、欠点・短所なのは間違いないからです。ただ、より褒められる人間になっていくために、欠点・短所の裏側にある美点・長所を、しっかり見ることもした方が良い、という提案です。もしそれができると、心が少し軽くなります。
褒めることが苦手な人は、他人を、そして自分を許すことが苦手な人だと言えます。要は自分にも他人にも厳しい人なのです。心理学では、自分を許すことができた度合いでしか、他人を許すことはできないと考えます。そのため、自分の短所・欠点の裏側にある長所・美点もしっかり見ていくことで、今までより少し、自分の短所・欠点を許せるようになります。すると他者の短所・欠点も許せるようになり、今までよりは褒められるようになる、というロジックです。これは、今よりもっと褒められる自分をつくっていく上で、大事な考え方です。
そしてもう1つ。これも大事な考え方です。
職場ではガミガミうるさく、周りから煙たがられているけれど、家に帰ると、自分の子供には優しい・甘いパパがいたとします。果たしてこの人には、優しい心根はないのでしょうか?もちろんある訳です。では、根は優しい人なのに、なぜ職場では怒ってばかりなのか?それは責任感の強さ故にです。
話をわかりやすくするために、少々極端な例を出しましたが、もし貴方が、瞬間湯沸かし器と陰口を言われる人であったとしても、心の奥には優しさや愛が確かにあることを、わかっておいて欲しいのです。
怒るのも、その人の未来を案じて、つまり愛から怒っていることもあるでしょう。また、『蜘蛛の糸』のカンダタのように、小動物や植物に、ふっと愛情をかけることもあるでしょう。「どんな人にも、100%、優しさや愛はある。ただ今は、その優しさが、立場や成育歴の影響で、発揮されにくくなっているだけだ」。自分を、そして人間そのものを、そのように解釈・理解できるようになっていくと、少しずつ自分の中の優しさや愛を、感じられるようになります。すると今より他者を褒められるようになっていきます。自分を認められるようになればなるほど、他者も認められるようになっていきます。
実行できるなら、ものすごく効果があるワーク
これは、昔、教えを乞うていた先生から教えてもらったワーク・達成課題で、もう20年くらい、数年の空きはありますが、私自身、ずっと続けてきているものです。心理学を学ぶ前より、多少は人を褒めることができるようになりましたが、そうなれた1番の要因は、おそらくこのワークにあります。
やり方
- 自分が普段関わる(週に複数回会う)身近な人を拾い出す(同居している家族・直属の部下等)。
- 一覧表を作る。
- その人たちを、月に1回褒める。褒めたら正の字等でチェックする。
- 2ヶ月連続で褒められたら、月2回に増やす。
以上です。やり方としては非常にシンプルですが、これがものすごく難しいですし、真面目にやるとものすごく効果があります。
実際にやり始めるとわかりますが、全然褒められない相手が出てきます。でも、そういう相手の良いところを探していく。そして、心の何割かはそんなことをやりたくないと思っていますが、それでも意志の力で褒めていく。これをやっていくことで、あなたの心に、優しさと愛、そして感情を意志の力で律していく力=自律性が育っていきます。
抜けなくやっていくと、3ヶ月目は月2回、5ヶ月目は月3回。。。と数が増えていきますが、取り敢えず月5回を目指してください。コンスタントに月5回褒められるくらいの優しさと自律性が着いてくると、ガラリと人生が変わります。平たく言うと、これまでより、グッと人間関係が良くなります。今までより、人から好かれるようになり、人から感謝されるようになります。もちろん子供・部下・生徒との関係も、ものすごく良くなります。なお、月5回を2ヶ月連続で達成できた後、6回7回と増やしていくか、5回をやり続けるかは、お任せします。ただ、ずっとやり続けることが重要です。私はだいたい20年続けています。
ただ、このワークは難しい!
ここで一番お伝えしておきたいことが、このワークをやり始めたとしても、全然できずに終わってしまう人が、少なからずいるということです。実際、私自身のことを考えても、確かにやり続けましたが、このワークを教えてくれた先生に就いて、対面の研修を受けている最中だった=やらないと怒られる環境だったから、続けられたと思います。もし皆さんのように、このワークを文字だけで知り、誰に叱られる訳でもない環境ならば、おそらく月1回というのも達成できずに、やらなくなっていたと思います。
これを、自力で月5回まで続けられ、しかもその後もやり続けられる人は、相当に意志の力が強く、且つ既にかなり愛の力が大きな人です。そういう人にとって、このワークはものすごく大きな効果を与えてくれます。
ただ、そういう人は多くない。ではどうすれば良いか?後日詳細は書きますが、私は、人格・パーソナリティの成熟度自体を上げていく努力を、コツコツ続けていくしか、方法はないと思っています。言葉を変えると、褒めることができる自分を、今から、自分自身で、コツコツ育てていくイメージです。少なくとも、この褒めた回数を正の字で付けていくというワークは、ここでいうパーソナリティの成熟度を上げていく努力の1つになりますので、できたりできなかったり、やらなくなったりするかもしれませんが、ぜひ始めていただけたらと思います。
今回は以上です。ありがとうございました。
追記
より「褒めることができる自分」になっていくためのワークを投稿しました。心理学① 自己理解を深めるためのワークシート | Jアカブログ (j-academia.com) ぜひこちらもご覧ください!
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